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2月14日
扉が開く。待ちわびた人物の来訪に、少年は思わず舌なめずりをした。こすり合わせていた両手を頬の左右に添え、口を尖らせる。
「いよっ!待ってました!」
部屋の中央にあぐらをかいて座っている学生服の少年、ダイキ。短髪ゲジ眉、細い目の、笑顔が似合う少年だ。
「ダイキ。来てたんだ」
部屋に入って来た少年も同じく学生服姿で、大きなカバンを肩にかけている。少し伸ばした髪を自然に流し、整った顔が優しい印象を帯びている。
「おう、お邪魔してまーす」
「もしかして、学校から直接僕んちに来たの?」
「おう。何てったってユウの為だからな!」
笑い飛ばすと言う言葉を思わせる、ダイキのパワフルな笑顔がそこにあった。
「自分の為でもあるだろ?」
少年ユウは半笑いで答えながらカバンを置き、ダイキの前に腰を下ろした。
「人聞きが悪いな。俺今朝から何も食ってねーんだぜ。何てったって今日はアレだからな」
引き続き笑顔のダイキに対し、ユウは表情を曇らせ、置いたカバンに目を落とす。
「ああ、それなんだけど…」
「ん?どした?」
ユウは首をかしげた後、カバンのチャックを開け、右手を中に入れた。ダイキの目線が目の前のユウからカバンに移る。
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