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「今年は…これだけなんだ」
ユウが控えめに掲げた手には、濃い赤色の紙で包まれ、金に光るテープで飾られた平たい箱があった。
「は?一個?」
ダイキの笑顔が一変、目を見開き口は半開きになっている。
「うん…」
「どうしたんだよ。去年は数えんのも面倒なくらいあったじゃねえか」
「分からない…」
ユウは掲げた手を下ろし、箱を床に付けた。ダイキは内緒話でもする様に上半身を乗り出して、ユウに接近する。
「バラしたのか?チョコ無理だって」
ユウは小さく、首を左右に振る。
「それは無い。誰にも話してないし…」
ダイキは元居た場所にドカッと座り、腕を組んだ。ユウはうつろげな目で、自分とダイキの間の床を見ている。
「僕にも何が何だか分からないんだ」
「んだよー、折角メシ抜いてきたってのによー」
声を大きくして不満を主張するダイキに、ユウはススッと床を這わせる様にして、赤い箱を差し出した。
「とにかく、これはダイキが食べて。僕はアレルギーだからね」
「おう…」
ダイキが赤い箱を受け取ると、ユウは立ち上がり、クローゼットを目指してフラフラと歩いた。
「言っとくけど俺はぜーったいアレルギーの事バラしてないぞ。何てったって俺達親友だからな」
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