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クローゼットの前に立ったユウは、ダイキに背を向けたまま、制服のボタンをひとつひとつ外していく。
「そうだね。去年、女子から貰ったチョコを代わりに全部食べてくれたよね」
「直接言わねえのか?チョコ無理だって」
黒い上着の袖から腕を抜く途中で、ユウの動きが止まる。
「…直接チョコを手渡ししてくる子も居る。食べれないからってはね退けたら悲しむかなって思うと、ね」
「ユウは優しいよな。んでモテる」
力説する様にダイキが言うと、ユウが脱衣を再開し、黒い上着を脱ぎさった。
「モテる…筈なんだけどな。今年は一個だけか」
ダイキが赤い箱を顔の前まで持ち上げ、手首をひねって箱を観察している。
「まっ!変にモテても迷惑だし気にすんなよ!」
ダイキは笑顔で立ち上がり、ユウの背中に近付いた。肩を叩いて励まそうとしていたのだが、ユウが振り返ったのでそれは出来なかった。
「迷惑はしてないけどね、ちょっと気になるな。嫌われる様な事はしてないと思うんだけど」
「嫌われたりしてねえよ。何てったってユウは優しいからな!」
ダイキの力強い笑顔に、ユウもつられて微笑んだ。
「ありがとう。そう言って貰えると嬉しいよ」
「おう!」と返した所で、ダイキの腹がググーッと鳴った。
「一個じゃ足んねえから、今日はもう帰って何か食うわ」
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