桜花降る池のほとりにて

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三年ほど前に建てられた池宮神社の大きな朱塗りの鳥居。如何にも神社らしいが、何か気後れがする。傘を斜めにして、見上げてからくぐった。 池宮神社の発祥は非常に古く、敏達天皇の御世に瀬織津比売命が池に出現された縁起により池宮神社が創建された。 また、池のほとりには龍神が祀られている。 桜ヶ池の龍神とは、平安末期、比叡山の高僧、皇円阿闍梨が、釈迦牟尼如来の涅槃の末、五十六億七千万年後に現れるという弥勒菩薩に教えを乞うべく、長寿の大蛇となることを決心する。弟子達は、大蛇の住まう池を探し国中を歩いていた処、並榎註記なる僧の夢枕に御釈迦様が現れ、桜ヶ池に導かれて、皇円阿闍梨は自ら池に沈んで龍神となったのである。更に、阿闍梨の弟子である法然上人が、供養の為、赤飯をお櫃に詰めて池に沈めたのが、以降八百年余にわたって続けられている「桜ヶ池のお櫃納め」の始まりとされている。現在は秋の彼岸の中日に、神社の豊年祭と龍神供養を兼ね行なわれ、神仏混交の奇祭でもある。また、この数日後には、空になったお櫃が池に浮かぶ「遠州七不思議」の一つに数えられている。 そして、桜ヶ池に沈めたお櫃が、長野県諏訪湖にも浮かび上がると言われ、湖底で繋がっていると言い伝えられている。 桜ヶ池は、二万年余前に作られた堰止湖で、池の位置は高く、南方以外を丘陵の原生林に囲まれ、広さは2万平方メートル。湖底の深さは、測れば神罰が下るとされ、未だ不明。故に底なし池とされている。 所々に記されている、池宮神社、桜ヶ池の由来の看板を横目で見ながら、通り過ぎた。
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