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「詩織、帰ろう?」
「うん」
いつものように翔と一緒の帰り道。
ここでなら誰にも邪魔されずにチョコを渡せる。
「それにしても今日はいつにも増して
クラスの人たち騒がしかったね」
「うん、今日バレンタインだからね」
あっちから話を振ってきた。
この流れなら自然にチョコを渡せるんじゃないか?
「あー、そっか今日か。
俺バレンタインってあんま好きじゃないんだよね」
「え?」
「そういうイベント事に乗っかって何かするとか馬鹿らしくない?
それに俺チョコ好きじゃないし」
何それ。告白する前にこれはない。
気持ちを伝えることすら許されないってこと?
あーダメだ。泣きそう。
「・・そっか、確かに馬鹿らしいかもね」
「でしょ?何で女子ってこういうイベント事好きなんだろうね」
そんなの知らないよ。今まで私だって参加してなかったんだもん。
参加する人の気持ちなんて知らない。
「・・さぁね、じゃまたね」
とぼとぼ歩いていたらいつも別れる交差点に着いていた。
いつもはもう少し一緒にいたいと思うけど
今は早く翔から離れたかった。
じゃないと泣いてしまいそうだから。
「おー、もうここに着いてたか
詩織、気を付けて帰れよー」
「・・うん、わかってる」
今は優しい言葉をかけないでほしい。
その時、詩織の目から1つの雫が頬を伝った。
「・・っ」
「え?詩織?どうし・・あ!おい!」
声をかけれたのを遮るように私は走ってその場から離れた。
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