陽気なオトコ

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鼓膜を震わせるのは体の芯に響く重低音。 大きな和太鼓の前で力強く振り下ろされる腕と、男の額から流れる汗。 バチを握る拳。低く落とされた腰と、舞台を踏みしめる足。 重なりあう力強い和音は、ただただ場を圧倒させる。 観客はいない。しかしただの練習風景にしておくのは勿体無いと思えるほどの気迫が演者から伝わる。 「はっ!!」 ビリビリと空気を振動させていた低音は、振り下ろされた腕を最後に消えた。 耳に残る余韻。 それは静まった室内に違和感を覚えるほどのものだった。 「10分休憩しよう」 リーダーらしき男が合奏していた4人の男たちに声をかけた。 皆一様に汗を拭い喉を潤すものを求めて、稽古場の舞台から離れていく。 大切なものを慈しむように丁寧にバチをおろして、首に下げたタオルで汗を拭う二階堂碧(ニカイドウアオ)に年配の男が近づき、名を呼んだ。 「碧」
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