不審なオトコ

16/16
3185人が本棚に入れています
本棚に追加
/513ページ
分かるように言ってくれと確かに口にした。 けれど、今のこの状況はなんだ。 どういう意図なのか。 二階堂がどうしたいのかわからない。 「……離せ」 思考が纏まらず、和真はそれだけを言うのが精一杯だった。 とりあえずこの状態を何とかしたくて、男の胸を押そうと手を伸ばした。 「!…なっ…にす…」 けれどその指先でさえ、二階堂は空いた手で握りこんで来て、和真は身動きが取れなくなった。 二階堂の手は熱くて、視線は真っ直ぐにこちらを向いていて。 さっきまで挙動不審だった男のものとは思えなくて、和真は息を飲んだ。 「…すみません。でも離したくないって、触れたいって思ってる自分がいるんですよ」 「…どういう……意味だ…」 …聞かなければ良かった。頭の片隅を後悔が掠めた。それなのに、唇は問いただすように動いていた。 「俺は、あなたが好きみたいです」
/513ページ

最初のコメントを投稿しよう!