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分かるように言ってくれと確かに口にした。
けれど、今のこの状況はなんだ。
どういう意図なのか。
二階堂がどうしたいのかわからない。
「……離せ」
思考が纏まらず、和真はそれだけを言うのが精一杯だった。
とりあえずこの状態を何とかしたくて、男の胸を押そうと手を伸ばした。
「!…なっ…にす…」
けれどその指先でさえ、二階堂は空いた手で握りこんで来て、和真は身動きが取れなくなった。
二階堂の手は熱くて、視線は真っ直ぐにこちらを向いていて。
さっきまで挙動不審だった男のものとは思えなくて、和真は息を飲んだ。
「…すみません。でも離したくないって、触れたいって思ってる自分がいるんですよ」
「…どういう……意味だ…」
…聞かなければ良かった。頭の片隅を後悔が掠めた。それなのに、唇は問いただすように動いていた。
「俺は、あなたが好きみたいです」
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