ストイックなオトコ

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小学6年の終わり頃。 交通事故で、母が病院に運ばれた。 碧は公演で各地を巡業中の父、雅人に連絡を取った。 「今すぐは戻れない」 雅人はそう言って、電話を切った。 病室に戻ると、包帯で頭部を包まれた母が痛々しい姿で横たわっていた。 慧も、部活の遠征に出ていてこの時は碧一人だった。 目を開かない母が怖かった。 手に触れようとして、でも怖くて。 何も出来ないちっぽけな自分がすごくすごく嫌だった。 気づけば病室を飛び出していて。 走る碧を咎める声も聞いた気がしたが、右から左へと抜けていった。 夢中で走って、碧は病院の外に出た。 駐車場入り口の脇に大きな木があった。 碧はそこから母の病室の辺りを、見つめていた。 本当なら。 その手を握ったり、目が覚めるまでそこに居ればそれだけで良かったんだろうけど。 このまま死んでしまったら…そう思ったら、息ができなくなりそうなほど、身がすくんだ。
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