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「ごめん…なさい」
泣きたいだけ泣くと、気持ちも落ち着いてきて碧は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
顔を離して謝ると、男の手がまた優しく頭を撫でた。
「別に」
青年は面倒くさそうに言ったが、口調と態度がバラバラなのが可笑しくて、碧は少し笑った。
「何が可笑しい?」
「お兄さんが面白いから」
「そんなこと言われたのは初めてだな。……ああ、そうだ。これ、やるよ」
照れているのか、ふっと目を逸らすと誤魔化すように手に持っていた箱を碧に差し出してきた。
「え……でも」
ケーキは好きだ。でも名前も知らないこの青年から、これを貰う理由がない。
戸惑う碧に、男は箱を両手で持たせた。
「…学校で俺が作ったものだから遠慮はいらない」
「…作ったの?すごい。でも本当に貰っていいの?」
碧は泣き張らした顔で、男を見上げた。
「いいんだよ。俺は…甘いもので人をしあわせにするのが夢だから」
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