3219人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーー
ーー
そう言って。
受け取った箱の中には、とてもあんなに若い人が作ったとは思えない綺麗な形の飴細工が乗ったガトーショコラで。
食べたその日は、気持ちがふわふわと浮いているような暖かさに包まれた。
それを口にしたのは病室で、場にそぐわない幸福感に罪悪感を抱くほどだったが、不思議とさっきまでの怖さは消えていて自然とそこに座っていられたのを、碧は今でも忘れない。
あの日から。
夢はパティシエになり、彼は碧の中でダントツ一位のヒーローになった。
彼のようになりたい、なろう。
高校卒業の年、多くはない製菓学校のパンフレットで彼の写真を見つけてすぐに桜井製菓学校に入学を決めた。
ああ、やっぱりすごい人なんだと思ったらとても誇らしくなった。
入学後も、彼のようになりたい一心で頑張った。バイトもして、フェアリーガーデンにも通った。
だからもう一度会いたいと思っていたし、この想いを伝えよう。
確かにそう思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!