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いつものように真ん中に眉を寄せると、和真は前に向き直って再び歩き始めた。
数歩分先を行く和真に、なんと返事をすればいいのか分からなくなり、碧は和真の背中越しに、もう一度謝った。
「…え、と…すみません」
「…謝るのが好きだな」
碧の声に、和真がちらりとこちらに視線を向ける。
「あ…すみま…じゃなくて…」
咄嗟に謝りそうになって口をつぐむと、和真は歩く速度を緩めると同時に、口元を綻ばせた。
「ふ…お前、面白いな」
「っ…」
どきりと心臓が揺れる。
そんな表情をされると、碧の心臓が持たない。
「…そういうの、反則じゃないですか?…俺、さっきあなたになんて言ったか分かってますか?」
半ば逆ギレだ。
自分でもそう思ったし、言っていることも矛盾だらけだ。
それでもなかったことにだけはしたくなかった。
けれど、そう思って必死になっていたのは碧だけだったようで…。
「?…何を怒ってるんだ?…面白いって云っただけだろう?」
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