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◇◇◇◇
「皆でやったら早かったのに」
21時。
梅園と一緒に二階堂を帰らせたことが薫には少し不満だったようで、手は止めないが和真と二人になった途端に小さく不平を溢した。
「悪かったな…あ、用事か?なら…」
帰っていいと言おうとしたのだが、薫に先を越されてしまった。
「何もないよ。オオタケさんのとこの注文は毎年だし、要領は分かってるよ、確かに。でもさ」
オオタケさんはうちのお得意様で、この時期になると花見も兼ねたパーティーを自宅で開く為に、たくさんの洋菓子を注文をしていく。
有り難い話なのだが、万年人手不足のフェアリーガーデンでは今日のように、夜のうちから仕込みをしなければとても間に合わない。
だから薫の不満も、分からなくはない。
むしろ新人の二階堂には手伝わせるべきだったし、本人もそれを希望していた。
けれど。
「……どんな顔してたらいいか分からなかったんだよ…」
和真はいつもなら漏らさない本音をポロリと溢した。
「里見がそんなこと言うなんてホント、どうしちゃったの?…昼休み、なんかあった?」
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