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最後の一品を冷蔵庫に入れ終わると薫は冷たく言い放った。
「話さないならあたし、帰るけど?」
作業テーブルを丁寧に除菌して薫は早々に奥の事務所の方へ行こうとした。
「………俺も男なのに、あいつ……好きだとか……」
背を向けた薫に、和真は小さな声で言った。
薫は和真に向き直ると、ふぅっと長く吐息した。
「……それで?里見はなんて答えたの?」
「考えるって……言ったな」
昼間の自分はどうしてそんなこと言ったんだろう。
改めて声に出したことで、何故、分かりきった答えを保留にしたのか和真には分からなかった。
「考えるの?相手、二階堂くんだよ?」
驚きに満ちた薫の言葉に、和真はぐっと詰まった。
彼は男で、自分も同じ。
そんな対象にはならないし、その想いにも答えられない。
「分かってる」
「分かってないでしょ。受け入れられないなら考えるまでもなく断るでしょ、普通は。……今までだってそうしてたんでしょ?」
薫はムッとして、和真の声を遮るように語尾に被せると、苛立ちを顕にした。
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