無愛想なオトコ

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和真は僅かに眉を動かすと言葉を発することすら面倒くさそうに呟いて、薫の提案を一蹴した。 「言うと思った」 「なら言うな。それに俺の無愛想と真宙は関係ないだろ?」 …無愛想だという自覚は和真にも一応あるらしい。 「大ありよ。だいたいあの写真だって、真宙ちゃんがいたから撮れたんだし」 真宙というのは、和真の妹の子で3歳になったばかりの女の子だ。 閉店まで残るのは和真と薫の二人だけなので、和真が真宙を目に入れても痛くないほど可愛がっていることを他のスタッフは知らないのだ。 撮影の時も真宙を前に座らせて、ケーキを食べさせていただけだ。 スイーツ王子の笑顔の秘密なんて、蓋を開けてしまえばなんてことはない。 ただの親バカならぬ姪バカだ。 「…俺は笑ったりしてない。…食べてる真宙が可愛かっただけだ」 ふいっと目を逸らした和真だったが、あの写真は不本意だったようで未だにそんな言い訳をする。 「あんたも相当強情ね」 「知らん。…それよりその卒業生、どうせ入れるんだろ?」 和真はバツが悪そうに持っていたペットボトルのキャップを捻ると、口元に運んだ。喉が大きく上下して、ごくごくと音を立てた。
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