無愛想なオトコ

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そんな些細な仕草さえ様になってしまう。中身も知っているし、見慣れているはずなのに、薫の心臓は不本意にも一つ大きな音を立てた。 「…っ桜井先生の紹介じゃ断れないでしょ」 一瞬鼓動が跳ねてしまったのを悟られないようにと、今度は薫が目を逸らすハメになった。 「一応、世話になってるしな。あと…ケーキが好きな奴は…俺は嫌いじゃない」 ペットボトルを冷蔵庫に戻すと、薫の変化には全く気がついていない和真は短く吐息を溢すと、ふっと表情を緩めた。 「っっ…あんたってホンット…」 「?…なんだ?」 「何でもないよっ!もう一回電話してくるからお客さん来たらよろしくねっ!」 笑えと言えば突っぱねる癖に不意に柔らかい表情を見せる。 薫は吐き捨てるように言い置いて、和真に背を向けた。 親機のあるデスクは、この部屋の一番奥に設置されている。 「?…なに怒ってるんだ、あいつ…」 薫の急に荒れた態度の原因が自分にあるとは夢にも思わない和真は、小さく首を傾げて、そのまま作業に戻っていった。
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