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いつになく厳しい声音に、碧はひっそりとため息をついた。
「なんです?」
「今は敬語はいらん。親として話している」
「…そんなんわかるわけ無いだろ」
親として話すならわざわざ稽古場で話す必要はないだろうと碧は内心思ったが、そこは敢えて口には出さずにおく。
「…本当にやめるのか」
父の言葉はずっしりと重く響き、碧はほんの少し罪悪感を抱く。
幼い頃から、当たり前のように太鼓に触れてきた。
彼のようになりたいと、必死でその背中を追ってきた。
けれど…。
「何度も…言っただろ?…俺は親父の跡を継ぐ気はないよ」
この際、はっきりとしなければ。
碧は気まずさを飲み込んで、正面から和太鼓の師であり、父親であるその人を見据えた。
「碧、それは」
「だいたいさ、それ分かってて俺を製菓学校に行かせてくれたんじゃないのか?」
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