3185人が本棚に入れています
本棚に追加
/513ページ
「え…?」
和真の行動に驚いて、小さく呟かれた声までは聞き取れなかった。
でも、和真が自分を引き止めたいんだということは伝わった。
碧は和真の前にもう一度しゃがみこんだ。
「聞こえませんでした。もう一回…言ってください」
俯く和真のつむじに視線を落として、碧は静かに言った。和真は暫く黙ったままだったが、観念したように重い口を開いた。
「違うと…言ったんだ。俺が困ってたのは……お前に触れられることが別に嫌じゃなかったことだ。嫌じゃない、嫌いじゃない。じゃあなんだ?…好きなのか?そんな簡単なことか?…この気持ちは…なんなんだ…」
一言一言、言葉を選ぶように話していた和真だったが、終わりの方は自問するように言葉を重ねると、緩く首を振って手のひらで顔を覆ってしまった。
「…和真さん」
迷わせたり困らせたりして申し訳ないと思う反面、和真の言葉が嬉しかった。
こうなると現金なものでさっきの罪悪感が嘘のように引き、早とちりして帰ってしまわなくてよかったとさえ思ってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!