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呆れたように大袈裟な溜息をついて聡一郎は語気を強めた。
「…今更ですか?製菓学校に通ってた上に見てるこっちが胸焼けしそうなほどチョコケーキを食べてるとこ見せられれば、だいたい分かりますよ、そんなことは」
聡一郎はいつも敬語で話す。相手が誰であろうと、それは変わらない。それが却って威圧的に聞こえるから、怖いと思うのかもしれない。
「や、そうなんだけど…親父しつこく聞くし」
碧はしどろもどろに言訳をした。
もちろんそんなものが、この男に通用するわけがないと知りながら。
「それも当然でしょう?碧さんの腕はここに居る面子の中でも飛び抜けている。跡を継いでほしくない親なんて居ないんじゃないですか?」
聡一郎は完全に第三者として言葉が足りない二人の気持ちを補った。
「聡一郎」
もういい、とでも言いたげな顔をして雅人はよくしゃべる男を窘めた。
「師範は口が上手くないんだから黙っていてください」
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