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頬を包む手の平は暖かくて、落ちて来た声は優しくて。
ゆっくりと目を開くと、真摯な色を宿した二階堂の瞳が目の前にあった。
「……っ」
答えようとして、でもうまく言葉にすることが出来なくて和真はぐっと唇を噛んだ。
不意に時が止まってしまったような作業場の奥で小さくカタンと物音がした。
その音にハッとして和真は慌てて二階堂の側から離れようとして、頭を強く左右に振った。
急な動作のせいか、立ちくらみのようにくらりと視界が揺れる。同時に足元もふらついたが、どうにか持ち堪えて二階堂の腕を離れる。
「しごと中…だろ…っ」
距離を取らなければ。
何故だかそれだけを強く思って、回復しない目眩の中、勢いよく方向を変えた。
「…っ」
だがそれがいけなかった。急速に目の前が白くなり何も見えなくなった。
「和真さんっ…」
支える力を失った体が傾ぐのと同時に和真を呼んだ声だけが、溶けていく意識に向こう側に強く残った。
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