陽気なオトコ

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雅人にも容赦のない聡一郎はピシャリと言い放ち、碧に向き直った。 「でも…言ったのはそれだけじゃないんじゃないですか?…」 聡一郎は、雅人の纏う空気の重さに気がついていたのだろう。 雅人の表情を曇らせるのは、家族の話だけだ。ここにいる人間なら誰もがその事情を知っている。 そして敢えてその話題には触れないようにしていた。 聡一郎の指摘は正しく、碧の良心を揺さぶった。 「…言ったよ。余計なことも…悪かったよ。…俺、太鼓は好きだからさ。だから」 碧は観念したように短く吐息すると、聡一郎の背後に立つ雅人にバツが悪そうに謝った。 元々、聡一郎がこのタイミングで戻ってこなくとも罪悪感は抱いていたのだ。 「練習は毎週来るんですよ。…夏祭りも」 聡一郎は二人の顔を交互に見て、わだかまりがなくなったことを確信したようで、口下手な雅人の代わりに優しく言った。 「…俺…叩いていいのかな」
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