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碧は胸を張って答えた。
「もしかして碧さんがよく食べてるチョコケーキの洋菓子屋さんですか」
頼み込んだという台詞にピンと来て、聡一郎が尋ねると碧は嬉しそうに店名を答えた。
「そうそう、フェアリーガーデン!…あっ!俺、電話するんだったっ。親父、俺後半抜けるっ」
店名を口にしたことで思い出したことがあったのだろう。碧は、慌てた様子で自分の荷物をバッグに押し込むと、出入口に向かって走り出した。
「…あ、あぁ」
突然のことに雅人が是も非も言えずにいると、隣に立った聡一郎が笑った。
「碧さんはいつも台風みたいですね」
「まったくだ。…聡一郎、その…すまなかったな」
出て行こうとして、戻ってきたもう一人の男にぶつかりそうになって騒いでいる碧を遠く眺めながら、雅人は先程までの親子のやり取りを詫びた。
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