無愛想なオトコ

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ただひとつ、店の一番奥で黙々と作業する、この男、里見和真(サトミカズマ)の眉間にシワが寄っていることを除いては。 特別にうまくいっていないことがあるとか、不機嫌だとか。 そういうことは何一つない。けれど和真は常にこうだった。 愛想もない上に、必要以上にここでは喋らない。 和真が今しがた作り終えたムースを冷蔵庫に入れると、店の電話が鳴りだした。 表に子機が置いてあり、事務所兼休憩室に親機が置いてある。 この場所ではどちらの音も聞こえる。 表にちらりと目をやると、店頭に出ているスタッフで共同経営者でもある藤原薫(フジワラカオル)はどうやら接客中のようだ。 時間も昼時で、他のスタッフには早めに休憩に出てもらっていて和真と薫しか店にはいない。 電話は鳴り続いている。
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