陽気なオトコ

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「あ、と…聡さんもありがとなっ!親父来週また顔出すから!」 二人のやり取りを知らない碧は振り返ると片手を上げて稽古場から去っていった。 「なんて言うか…碧さんは素直ですよね」 「あいつは根が単純なんだ。…自分に正直だしな……何を笑ってる?」 碧の後ろ姿を見送って口にした言葉に雅人が同調したのを聞いて、聡一郎はクスクスと笑みを溢した。 「いえ…単純なのは師範に似たのかなって。…頬が緩んでますよ?」 口元を揺るませたままの聡一郎は、雅人をからかうようにそれを指摘する。 ふっと目を逸らした雅人は、自身の和太鼓の前まで戻った。 「……ろくでもないところばかり見てる奴だな…。ほら、そろそろ始めるぞ」 10分前と同じように重低音が響く。 碧が抜けた穴を埋めるようにして、いつもより長くその音は続いた。
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