融ける、落ちる

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すぐに追いついて来た二階堂は再び腕の中に和真を抱きしめた。 「すみません」 しゅんと萎んだ声が、肩越しに届く。 申し訳なさそうに謝る声にいたずらを叱られて尻尾の下がった犬の姿が脳裏の浮かんで、和真はため息をついて二階堂の手の甲をポンと叩いた。 「…分かったから、離せ」 このやり取りをずっと続けるわけにもいかない。こんなにすぐに許してしまうのは甘いかもしれないと思いつつ、和真はするっと二階堂の腕を抜けた。 「…そういう顔も好きです」 もっとショボくれた顔をしているのかと思って二階堂の顔を見たが、なぜか嬉しそうに口元を緩めていて、和真は怪訝そうに眉を寄せた。 「全然反省してないだろ…」 「そんなことないですよ。ただどんな顔してても和真さんは綺麗だなって思って…」 綺麗だと言われるのは好きではない。それなのに、二階堂の言葉はラズベリーのように甘酸っぱく和真の耳に響いて、嫌だなどとは微塵も思わなかった。 「…言ってろ。やっぱ風呂は一人で入る」 嫌悪どころか無性に恥ずかしくなって来て、和真はふいっと顔を背けた。 耳が熱い。 「え!そんなっ…」 残念そうに追いすがる声が聞こえてはいたが、和真は敢えて無視して、浴室のドアを閉めた。 「じゃあな」
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