祭りと、君と。

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***** 「昨日のこれ、覚えてますか?」 朝から和食だったのが嬉しかったらしく、(真宙ちゃんに合わせて朝食は殆ど洋食だそうだ)和真は気持ちいいほどに食べてくれた。碧はホクホクした気持ちのまま和真に食後のコーヒーを出した後、ようやく本題に入った。 「あぁ、昨日の…引くとか引かないとか言ってたやつか?」 改めてその包みを受け取って、和真は碧の方を見た。 「…そうです」 手渡したものの、勢いで買ってしまったそれを和真が快く受け取ってくれるだろうか。 若干の不安も手伝って、碧は包みを持ったままの和真に念押しした。 「引くようなものなのか?」 和真は怪訝そうに眉を寄せ、昨晩と同じように包みを軽く指で押した。中身を知っている碧からすれば当然だが、音はしない。 「よかったらここで開けてみてください」 「……そうする」 一瞬迷う素ぶりを見せた和真だったが、素直に碧の声に従ってくれた。 袋を開けると、和テイストの包装紙が顔を覗かせる。 「これ…」 合わせを解くと、中から濃緑の地にかすれ縞が入った浴衣と派手さはないが黒地に同じ色の龍の地模様のある帯が入っており、和真は目を見張った。 まさか浴衣が入っているとは夢にも思わなかったのだろう。 「えぇっとですね…俺この前呉服屋さんに行ったんですけど、それ気に入ってしまってどうしても和真さんにあげたくなってしまってですね…」
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