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昨日も同じようなことを言った気がするが、いざ目の前で開けてもらうと無駄に緊張して、碧は一人でテンパってしどろもどろになった。
「わざわざ仕立ててくれたのか?」
和真は碧の渡した浴衣を愛おしむように手のひらでそっと撫でた。
「あ、えーと…俺のもやってもらったんでついでというか、その…」
浴衣を仕立てるとなるとそれなりの金額にはなる。下手なことを言って気を遣わせるわけにもいかないと思うものの、いい言い訳が出てこない。
「そうか…ありがとな」
言葉に詰まる碧を他所に、和真はふわっと微笑んで、包みを丁寧な所作で元に戻した。
「…なんかテンパって損しました」
一瞬その顔に見惚れて、碧は大きくため息をついた。
「?…テンパってたのか?」
始終しどろもどろだったと思うのだが、和真は気づいていなかったようだ。
それはそれでありがたい。
「気づかないでいてくれてありがとうございます」
「それはお礼を言うとこなのか?」
「俺にとってはそうです」
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