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一ヶ月以上先の話だと思っていたのに、夏の繁忙期の慌ただしさに加えて、二階堂への梅園の仕事の引き継ぎ業務もあり気がつけば約束の日は明日に迫っていた。
一足先に休みを取っていた二階堂から連絡が来たのは仕事も終わった夜のことだった。
『お疲れ様です、和真さん』
一日声を聞いていなかっただけで、なんだか久しぶりに会話したような気分になりながらも和真は素っ気なく「お疲れ」と声を返した。
『すみません、忙しいのに一日早くお休み頂いてしまって』
電話の向こう側でしゅんと首を垂れている姿が容易に想像できて、和真は口元を緩めた。
「前から希望してた休みだろう?謝る必要はない。…二階堂はホント謝るのが好きだな」
「そういうわけじゃなくて…電話をかける口実と言うか…声が聞きたかったんです』
少し低い声が耳元からダイレクトに伝わって、どっと鼓動が跳ねた。
ストレートな言葉に、顔まで熱くなる。
「…昨日も会っただろ」
赤くなっている自分を悟られないようにぶっきらぼうに答えると、二階堂からすぐに反論があった。
『でも業務的なことしか話してません』
「まぁ忙しかったしな」
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