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「…どうして、ですか」
フランスで学ぶことは和真が今後店を盛り立てていく上でも、職人としての在り方にもいい影響を与えるだろう。
誰の目から見てもそれはチャンスであり、それを受け取ることへのデメリットは見つからない。
和真自身も悪い話だとは思っていないようなのに、同じ口で迷っていると言う。
「今行ったら…逃げるみたいだろ。そんな不純な動機で行く場所でもないし」
崇高な学び舎と思っているからこそ、私情を挟むことに抵抗があるということだろうか。
真面目な和真らしい迷いだ。
けれどそんなことよりも。
「和真さんは…俺から逃げたいの…?」
「…そうじゃない。でも」
「同じことだよ。あんたは現状じゃダメだって思ってる。俺から距離を取ろうとしてる。だからフランス行きの話を俺にしたんだ」
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