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そうでなければ、今その話を持ち出すことはなかったはずだ。
「…そうでしょう…?」
そうだと言って欲しくないのに、和真の二の句を待つ自分はなんだ。
なんなんだ。
碧は耐えるように膝の上で拳をぐっと握りしめた。
「……」
「……」
沈黙が辛い。
手を伸ばせば触れられる距離に居て、お互いに想う気持ちがあるのに。
間に横たわる空気は冷たく重い。
和真は無言のまま、グラスを2つ手に取ると氷を入れた。缶ビールの横にあったウイスキーのボトルを開けると、並べたグラスに半分ずつ注ぎ、マドラーで氷と混ぜてから炭酸水で割った。
ハイボールだ。
和真は1つを碧に差し出して、自分も一口飲んだ。
碧も煽るように半分程飲んだ。
弾ける炭酸と濃い目のアルコールが喉を刺激して焼け付くような感触を味わっただけで、味なんてろくすっぽ分からない。
なんのために作ってくれたのか、和真の真意がわからないまま、碧はハイペースで飲み進めた。
和真も半分程飲んだところでようやく口を開いた。
「…変に……なりそうなんだよ。お前があの時オレに好きだって言った声がずっと頭から離れないんだ…。隣にいると触りたくて…触って欲しくて堪らなくなる…こんなのは…嫌なんだよ」
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