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こんなのは自分じゃないと言った時と同じ、戸惑いと自己嫌悪の入り混じった声。
和真はグラスの中で氷と揺れる琥珀色の液体を見つめていたが、やがて緩く首を振って何かを振り切ろうとするかのように、残った酒も一息に飲み干した。
「だから俺から離れるの?」
「二階堂」
分かってくれとでも言いたげな眼差しで和真がこちらを見ている。
和真の気持ちも分かる。けれどそれ以上に。
「俺はそれでもっ…あんたの側に居られなくなるのは嫌だっ…!」
離れたいなんて聞きたくなかったし、分かりたくなかった。碧は高ぶる感情のままに和真の肩を強く押してソファーにその体を押し付けた。
「二階堂、やめっ…」
抗議の声と押し退けようとする腕が。
ギリギリの理性で保たれていた碧の中の細い糸を断ち切った。
ぶつり、と音が聞こえたような気がした。
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