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「はは、分かる?」
薫のため息など全く無視して、桜井は悪びれなく笑うばかりだ。
薫にとっても恩師だが、時々彼からの電話は無言で受話器を置きたくなる。
和真と薫は同じ製菓学校出身で、桜井は当時の担任だ。
彼の洋菓子を作る技術は素晴らしく、尊敬もしているがオヤジ臭漂う会話術には正直辟易させられる。
「…分かりますけどやめてください。後で私が困ります」
薫は受付業務や接客もこなす一方で和真と同じように製造にも携わる。
要するに忙しいのだ。
そろそろ本題に入ってほしい。
「そうか、悪かったよ。ところでお店の方はどう?」
苦言を呈したのがきちんと伝わったようで桜井は笑いを引っ込めた。
「おかげさまで、順調ですよ」
オープンして2年足らずだが、桜井のコネでお願いした地方誌の取材を受けたのが良かったようで評判は上々だ。
「雑誌にも綺麗に写ってたしねぇ」
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