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疲れた体をベッドに投げ出すと、瞼はずしりと重くなり眠りはすぐに訪れた。
碧はとても疲れていて、眠りは深いはずだった。
だからそれが夢だと気がつくのに時間がかかった。
さわさわと頭上で木の揺れる音がする。頬を撫でるのは湿気を孕んだ生暖かい風。
「和真さん、俺」
碧は木々の生い茂る人気のない場所に、和真と二人きりだった。
ああ、これは夢だなと浅くなった眠りの隙間にそう思った。
夢の中の碧は、和真に覆い被さるように距離を詰めていて少し切なくなった声で言った。
「あなたが好きだって言いましたよね?」
和真の背には立派な大木。
逃げ場のなくなった和真はほんの少し眉を寄せると、ふっと碧から顔を背けた。
「…近い」
やめろとか、嫌だとか。
そういう言葉を吐き出すのかと思ったが、和真は昼間と同じフレーズを口にした。
ただ昼間とは違って、その頬はうっすら赤く染まっている。
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