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「…このまま俺のものにしてもいいですか」
それだけのことにさえ、夢の中の自分はムラムラと欲情してたいして抵抗のない体をぐっと引き寄せて、碧は柔らかく耳朶を食んだ。
ピクリと揺れる体と、微かに漏れる吐息。
「和真さん…」
背けられた頬を手のひらで包むと、和真はちらりと碧を見上げた。
「キスしても、いいですか」
唇がつきそうなほど近く囁くと、了承を得る間もなく、碧は和真の頬を引き寄せた……つもりだった。
「…!」
伸ばした腕は宙をかき、掴み損ねた体はバランスを崩した。
ドスンという鈍い音と痛みに視界が切り替わる。
「…い……てぇ」
肩の辺りが、熱いような嫌な感覚がしてじわじわと痛みに変わっていく。
見渡すまでもなくそこは碧の部屋であり、普段通りの目覚めなら見えるはずのないものが見えた。
「………なんて夢見てんだ俺…」
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