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◇◇◇
二階堂の様子がおかしい気がする。
和真はあのあと、あれこれ指示を出し簡単な作業なら手早くこなす彼を見て、出来る男なのだろうと認識した。
けれど、梅園の手伝いをしている時はいいのに、和真が近づくと物を落としたり、材料を零したりとミスを連発する。
その度に、口では忙しなく何度も謝るが目は逸らされていて、視線が絡むことはなかった。
一体なんなんだろうか。昨日は初日だが、そんな素振りはなかったように思う。
「なぁ、薫。あいつなんかおかしくないか?」
梅園に頼んで二階堂が一緒に奥の倉庫に備品の在庫確認に行った隙に、和真は薫を呼んだ。
「あいつって二階堂くん?」
「他に誰がいる?」
薫があまりにもわざとらしく確認してくるから、和真の声も自然と低くなる。
「…いつもは気にしないのにねぇ」
「どういう意味だ?」
ため息混じりに薫が言った言葉は、今度は足らな過ぎて理解出来なった。
「他人のことよ。…彼に限らず私にはよく見る光景に見えるけど」
「…分かるように言ってくれないか?」
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