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主語のない薫の言葉は和真には曖昧に聞こえて、苛立ちに眉間が寄った。
「…里見に見とれてる新人さんは皆あんな態度だったと思うけど?…」
見とれている…?
緊張しているとか、そういうことだろうか?
けれど昨日は妙に距離が近くて、もっと強引で。
どういうつもりだったのかは分からないが、抱き締めて来たじゃないか。
「そういうことか…?」
和真は一日で態度の変わった新人の男のことがどうにもよく分からなくて、気にしているらしい自分にも戸惑いを覚えた。
「あたしに聞かれても分からないよ。…まぁ、不思議に思う気持ちは分からなくもないよ。…昨日、抱き締められてたでしょ?」
「っ…見てたのか?」
見られていたとは思ってもみなかった。疚しいことをしていたわけでもないのに、和真は頬の温度が一度ほど上昇したように感じた。
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