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「見ようと思ったわけじゃないけど…なんか疚しかった?」
薫は和真の表情の変化に驚きながらも、茶化すように問いかけた。
「疚しいってなんだ……薫、お前面白がっているだろう」
からかい混じりの口調につい声が大きくなってしまい、和真は薫をじとりと睨んだ。
「そんなことないよ。…ただ…里見もそんな顔するんだなって…思っただけで…」
「薫…?」
てっきりいつもの悪のりだと思っていたのに、意外にも薫から返ってきた声は弱々しいもので、和真は訝しむように彼女の顔を覗き込んだ。
「何でもない。…まぁあんたの顔に慣れれば二階堂くんの態度も変わるんじゃない?」
ぱっと顔をあげた薫はもういつも通りの態度に戻っていて、和真はふっと短く息を吐いた。
あまり、人の気持ちを読み取るのは得意ではないし、なんと声をかけるのが正解なのか分からない。
だから今みたいなイレギュラーは困る。
「顔に慣れるって…そういう問題か?」
薫の声のトーンが戻ったことに安堵しつつ、和真はいつものように眉根を寄せた。
「…そうであって欲しいってあたしの希望かな」
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