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「…………なに?」
今、この男は疚しいと言っただろうか?
和真は一瞬聞き間違えたかと思い、問い返すが二階堂はぐっと押し黙ったままだ。
「………」
器にはいくらかうどんが残っていたが、二階堂は静かに箸を置いた。
「おい、二階堂」
いつまでたっても答えを返してこない二階堂に痺れを切らして和真は促すように名を呼んだ。
「だから…疚しいんです!俺!…あ~もうっ!こんなつもりじゃなかったのに」
二階堂は吐き出すように言うと、片手でがしがしと髪を掻き回した。
「…分かるように言ってくれないか?」
朝の薫とのやり取りを思い出す。同じことを口にしたような…。
和真は大きくため息をついた。一日のうちでこんなに何度も「疚しい」などという言葉を耳にすることになるとは思ってもみなかった。
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