不審なオトコ

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「……分かるように、言ってもいいですか…?」 呟かれた声は独り言のようでもあったし、和真に向けたもののようでもあったが、昼時のざわめく店内で和真は聴き逃してしまった。 「悪い、もう一回言ってくれるか?」 「…とりあえずうどん食いながらする話じゃないと思うんで…出ませんか?」 和真が頼むと、二階堂は困ったように笑い、親指で出入り口を指した。 和真は釣られて出入り口と、壁の掛け時計を交互に見て、席を立った。 「あぁ…そうだな。じゃあ」 休憩終わりまでにはまだ30分程ある。道路を渡れば目の前は公園だ。疚しいと公言した二階堂の話を聞くにはいい場所だろう。 精算を済ませて、外へ出る。今日は春らしく穏やかな陽気で歩くには丁度良い。 時折、心地良い春風が吹いてきて和真の髪をさらさらとなぞっていく。
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