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和真の声に押されるように、二階堂は膝の上で拳をぎゅっと握りしめて意を決して口を開いた。
「…俺、ずっと里見さんに憧れてたって言いましたよね…?」
「…聞いたな」
昨日の言葉を思い起こさせるような二階堂の言動の意図が掴めず、和真は眉を寄せた。
「…憧れで目標で里見さんのような職人になりたくて…頑張ってきたんです。けど…実際に同じ職場に来られて…触れられる距離に来て……朝方、夢に里見さんが出てきたんですよ」
「…それは疚しいのか…?」
夢に見たと言われてなんとなく気恥ずかしさは感じたが、それ事態はなんでもないことじゃないだろうか?
和真はやっぱりよく分からなくて、聞き返した。
すると、隣に座っていた二階堂は和真の頬にするりと手を伸ばしてきた。
「だって俺、夢の中で…」
驚いて二階堂を仰ぎ見ると、間近に二階堂の顔があって更に驚く。
「ち、か過ぎだろ」
頬をなぞった指先は緩く顎を掴んでいて、和真は顔を逸らすことが出来ない。
「…俺の気持ちを分かるように説明してくれって言ったのは和真さんですよ?」
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