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「わたしのしょうらいのゆめはせかいいち大きいお花やさんになることです。」
小学校何年生の時だろうか、私は将来の夢についての作文にそう書いた事がある。
"世界一大きいお花屋さん"中学2年の夏まで本気で目指していた夢だったが、そんなものがどれだけ需要のない店なのか言えるほどには大人になった。
"大人になった"といえば一見聞こえがいいが私にとってそれは絶望でしかなく、幼い純粋な頃の瞳にキラキラと全て輝いて見えた世界が今ではコンクリートの塊で出来た建物のへと変わってしまった。
同じ体験をしているはずなのに周りはそんな事気にも止めずに大人の象徴であるかのようにスーツを身にまとい忙しく足を動かしている、その様子を仕事終わりにたまたま立ち寄ったカフェでただひたすらぼーっと眺めていた。
冷たくなったコーヒーを口に運び、もう終電に近い時間になっていた事に気づき急いで鞄を持ち店を出た。
改札を抜け階段を上りホームにつく、車内に入り椅子に座ると足元のヒーターが私を優しく包み頬が緩む、ホッと終電に間に合ったことに一息安心する。
ふと辺りを見渡してみると、疲れた顔をして窓の外を眺める人や猫背で携帯を眺める人、寝てる人、誰も私が車内の中に入ってきた事など気にもせず自分個々の世界の中にいた。
上を見ると青白い蛍光灯が私を照らしている、いつもこの光を見る度に喧嘩別れした元カレを思い出してしまう。
私は彼のどこが好きだったのかと聞かれると明確とした事は言えないがあの何とも言えない雰囲気が好きだった。身体のシルエットは華奢なのに何処か男らしさを感じ、顔は可もなく不可もなくどんな表情をしていても少し影もある人で直毛ストレートでさらさらな髪がコンプレックスだといつも気にしていて毛先をいじっていた。
あの、常にニコニコしているのに何処か苛立っているような寂しそうな表情がまるで、体に悪そうな青白い蛍光灯に似ていて心を惹かれた。
いつも何を考えているかわからなくて、とても魅力的で素敵だった。
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