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俺はいかにも憂鬱そうな顔を引っ提げてコンビニのレジで突っ立っている。 店の角に隠れているつもりなのだろうか、監視カメラの映像に映るアダルトコーナーで雑誌を片手で拡げながらゴソゴソと怪しげな動きをしている客を尻目に "嗚呼、今日も今日とて何も無い平凡で平和な1日だな" とか目を擦りあくびでもしながら下らない事ばかり頭の中でぼやくのだが、 次第にそれはふつふつと沸騰し行き場のない怒りへと変わり湯気を噴き出している。 幼い頃からそうだった、特に目立つ様な性格でもなくテストの点数はすこぶる悪かったが(自分の中での話である。)成績は中の下、ただぼーっと流れていく出来事を毎日を眺めては過ぎ去っていく至極平凡な人間、普通はその毎日に何かを感じることは無く皆、淡々と平和な日々を繰り返すのだろうが、俺は時折そんな毎日に沸々と湧き上がる何か、憎悪に似た感情を抱いた。 違う、こんなんじゃない。 違うだろ。 もっと何かやり遂げなきゃいけないことがあるはずだ。 今の俺は本当の俺じゃない。 小学校6年生の時、こんな事ばかり延々と考えるのはきっと自分がまだ若くて未熟な考えを持っていて何かこの世の中に対して、いわば大人のよく言う反抗期的なものをぶつけているだけなのだと思うようになった。 でも残念ながら成人を越えた今でも″反抗期″は続いていて、まだあの頃から″大人″に成長していないだけだと言われればそれまでなのだが、その代わり″怒り″は歳を重ねる度年々と成長している。 どうしたらこの苛立ちは無くなるのだろうか。 そんな事を考えていたらバックヤードから俺を呼んでいる声に気づく。 重々しい足どりで向かうと、さっさとしろと急かすように応戦の呼び出し音を鳴らされ、苛立ちを抑え仕方なく少し急いでバックヤードに入ると、もう1人のバイトの佐原が唇の右下にあるデカめのほくろをこれでもかと言わんばかりに下に下げ待っていた。 「何回も呼んでるのに中々来ないから僕ついにバイトバックれて帰っちゃったかと思ったよ。藤岡くん何回も無断欠勤してるからね。もう殆ど店から信用ないんだからいつクビになるかわからないって自覚持たなきゃ。わかってる?」 俺と同じただのバイトの癖に偉そうに早口で話す佐原に鬱陶しさを感じながらもその言葉が胸にチクチクと刺さる。
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