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その後も愚痴口と何か言っていたが佐原のよく動くほくろを眺めていたら時間はあっと言う間に過ぎていき、俺は淡々とすみませんと適当に相槌を打っていた。 「はぁ、まあいいや、藤岡くんここに置いてある飲み物補充しといて、その後そのまま休憩取ってくれればいいから。30分休憩ね。」 佐原はあからさまに 1つため息をついて”じゃあよろしくね”とバックヤードを後にした。 俺はその使い古したぼろ雑巾のような背中を見届けた後、一 言 糞がと呟いた 寒さ対策用のジャンバーを手に取る、いつも極寒の北極にでも行くのかと思う程大袈裟に極暖のコイツを着る度に、自分も寒さに大袈裟に反応している気持になって何とも言えない恥ずかしさを覚える。 イライラしながらジャンバーを羽織りクール室に入るとりひんやりとした空気が俺を包み込みゆっくりと心を静めていく、唯一防犯カメラもないこの隔離された部屋が俺は密かに好きだ。 ドリンク補充も終わり休憩室に戻ると時計の針が午前3時14分を指していた。 いかにも身体に悪そうな青白い蛍光灯、どこか俺に似ていると最悪な口喧嘩をした元カノが言っていたのをふと思い出しまた憂鬱になる。 1つため息をつき、ぎぎぎぎっと今にも壊れそうな音を立てる折り畳みの椅子に腰をかけ、机に置いてある賞味期限切れの菓子パンに手を出す。ガサガサと音を立てながら封を開けそれを取り出し口に含むと安っぽいチョコレートの味が舌の上に広がりモサモサとしたパンの食感が食欲を減退させた。 半分ぐらい食べたところで胸のムカつきが主張してきたので、パンをゴミ箱へ放り投げ少し睡眠を取ることにした 。 午前3時23分。 まだ休憩時間が21分もある事に安堵を感じながら瞼を閉じた。
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