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早速アプリを使い美容院を予約する、この時代に生まれてきて本当に良かったとこの時初めて思った。後は服だちゃんとしたおしゃれ着の冬物を一切持っていない、おまけに今気づいたが必要最低限の物以外の靴を1度売り払ったので買い直す必要があった、1式買い揃えなければいけない現実に段々とまた憂鬱な気分になってしまった、全て揃えるには一体いくらかかるのだろうか。 服の事を考えていたら佐原が休憩から戻ってきて相変わらずぼろ雑巾の様な背中だったが、自分も似たようなものだと気づきなんだか佐原を応援したくなった。 「佐原さん…」 「ん?藤岡くんどうしたの?」 「いや……なんかよくわからんですけど、お互い頑張りましょうね」 佐原は俺の急な言動に一瞬きょとんとしてから甲高い声で笑いだした、その表情は今まで見たことの無い嬉しそうな顔で、まるでレアなポケモンをゲットした気持ちになった。 「はぁ、いきなり神妙な顔して何を言うかと変に身構えたらよくわからないけど応援されちゃったよ。私はずっと嫌味みたいな話しか喋らなかったから藤岡くんには嫌われてると思ってたけどね。なんかごめんね。うん、うん、藤岡くんありがとう。お互い頑張っていこうね。」 そしてまた少し笑った後、佐原はトイレ掃除をしてくるとレジを去った。 少し佐原と距離が縮まった事に背中がむずむずするような奇妙さを感じながらも、普通に佐原はいい奴で俺がひねくれてただけなんだなっと反省した、改めてちゃんと会話するのは大事な事だと学んだ。
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