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「いつもお世話になってます」
そう言いながらブランド物の紙袋に入れられたチョコを手渡され、露骨に嫌な顔をしてしまいそうになるのを必死で堪えつつ、『さて、どうしたものか?』と試行錯誤した。
去年社内で、バレンタインのチョコレートは遠慮しようと部署内全員一致で決まっていたのに、そういえば彼女は4月採用の事務員だから、知らずに用意してしまったのだろう。
「ありがとう」
わざわざ、その事を話題にして、彼女の好意に水を差すのもどうかと思ったし、あまり接点のない自分が彼女にその事実を告げるより、彼女と親しい同僚からやんわり事実を知る方が彼女にとって親切になると考えた。
「他の人には内緒ですよ。藤宮さんだけ、特別ですから」
そう言ってそ知らぬ顔で自分のデスクに戻って行く彼女のくれたチョコレートは、アルコールの利いたチョコレートの詰め合わせだった。
「今度、釣りに行く時、是非誘って欲しいです。出来れば二人で」
趣味の夜釣りを会社で話して、土曜の夕方に希望者を拾って港で釣りをした事があったが、彼女はそれを気に入ったのだろうか?
今まで何度となく、港で夜釣りをしてみたいと言う会社の人間を何度も連れて行ったが、彼女はそう言えば、去年4月の入社以来、必ずと言って良い程、その集まりに顔を出していたが……。
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