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でも、どうしてわざわざ一緒にチョコレートを探すようなことをしたのでしょう。
「それで、どうでしたか? 甘すぎなかったですか?」
そんな疑問よりも味の方が気になったのは、恋する乙女としての当然のことです。
「とても美味しかったよ。ごちそうさま」
森永くんはそう言って微笑んでくれました。
「よかったぁ」
私は力が抜けてしまって、その場にしゃがみ込んでしまいます。
色々と予想外のことだらけでしたが、結果としてチョコも食べてもらえたし、手紙も渡せました。まさにハッピーバレンタインです。チョコレートの神様に乾杯です。
「本当は、すぐに種明かしするつもりだったんだけどね」
そうでした。まだ疑問は残っていました。
「それならどうして、わざわざありもしないチョコレートを探すようなことをしたんですか?」
しゃがみ込んだままの私の質問に、ふふふ、と笑ってから、森永くんはこう言いました。
「天井くんが、如月さんのこと好きだって気づいてた?」
「えっ!?」
初めて聞いたまさかの事実に、私はびっくり仰天です。
「だから、さっき釘を刺しておいたんだ」
なるほど。ん? 釘を刺すって、天井くんが私を好きだったら森永くんが困るみたいに聞こえるのですが……。
「今日も、如月さんと千夜湖さんの女子トークを気にしながら聞き耳を立てて、期待して教室で待ってたみたい」
なるほどなるほど。チョコを誰に渡すとか渡さないとかの話ですね。あれ、私と麗都がそういう話をしていたことを、森永くんも知ってるってことは、同じように気になって聞き耳を立ててたってこと……ですかね。
「ほら、立って」
来年以降はちゃんと私からチョコを渡そう、と決意を胸に秘めながら、彼が差し伸べた手を、私は握りました。
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