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今日は二月十四日、バレンタインデーです。一般的に日本では、女の子が想いを寄せる男の子にチョコレートを渡す素敵な日です。
恋する高校二年生の私、如月充枝(きさらぎみつえ)も、今日が勝負の日なのです。頑張りますよ。
「よっ、みっちゃん」
緊張しながら登校していると、幼馴染の千夜湖麗都(ちよこれいと)が元気に声をかけてきました。麗都とは、いわゆる腐れ縁というやつで、幼稚園のときからずっと一緒なのです。キリッと整った顔立ちが、今朝も爽やかさを演出しています。
「おはよー」
なるべく普段通りを心がけて、私は挨拶を返します。
「みっちゃんはチョコ、誰かに渡すの?」
ところが麗都は、一瞬でそんな私の努力を水の泡に。あわわわわ。
「チョッ、チョコッ!? ああああ、今日はバレンタインだったっけ! わわ私、なーんにも用意してないや! あははははは」
両手のひらを晴れ渡った空に向けて、私は自然に笑います。チョコっとだけ、怪しくなってしまったかもしれません。
「ほんっと嘘つくの下手くそだよな。で、誰にあげるの?」
なななななんと、ソッコーでバレてしまいました。私の必死の嘘がバレンタイン! とか言ったらごまかせますかね。そんなわけないですね。ええ、わかってます。現実はホワイトチョコみたいに甘くはないことくらい。
「麗都には教えなーい」
プイっと顔を背けながら、私は冷たく言いました。
「えー? いいじゃん、教えてよ。知りたいなー」
「だめ!」
「なーんてね。みっちゃんの好きな人、なんとなくわかるよ。だって、ずっと一緒にいるんだから」
「えええっ!? どうして私の好きな人が――」
っと、危ない危ない。本人の名前を言ってしまうところでした。これは麗都のはったりに違いありません。その手に乗るものですか!
「あはは。ちゃんと渡せるといいね」
麗都はそう言って、私の背中をバンバン叩きます。
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