本命チョコレート消失事件

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 放課後になりました。クラスの男子たちは、今日はずっとそわそわしていた気がします。それに比べて女子の方は、楽しそうに友チョコの交換会を繰り広げていました。  私はといえば、休み時間のたびに襲い来る麗都の追及を、必死にかわし続けました。どうにか逃げ切ることができました。めでたしめでたし……と言いたいところですが、私の戦いはこれからです。おっと、まだ打ち切りじゃないですよ。  意中の男性は、すでに呼び出してあります。呼び出しさえすれば、いくら臆病な私でもチョコを渡すだろう。そう思っていましたが、やはり緊張はします。  私は『人』という字を手のひらに三回書いて飲み込みます。それを七回ほど繰り返すと、高鳴っていた心臓がようやく落ち着きを取り戻しました。  さて、二十一人の『人』を飲み込んで、いざ決戦の舞台へ。といっても、隣の空き教室なんですけどね。先生から鍵を借りているので、邪魔が入ることはないはずです。先生は「普段如月さんには色々と手伝ってもらってるからねぇ」と快く鍵を貸してくれました。普段真面目だと、こういうときに役に立ちます。  しかし「きっと、チョコを貰う相手も嬉しいはずよ。頑張ってね」とも言われてしまいました。チョコを渡すことは濁して鍵の拝借を頼んだのですが、私の目論見はバレていたようです。大人の観察力は侮れません。ぐぬぬぬぬ。鍵を返すときには結果を報告しなければ。
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