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教室には男子が数人残っていて、何やら雑談を交わしています。チョコを貰ったとか、貰えなかったとか、とても楽しそうにお話をしていました。彼らは一瞬だけ私たちを見ましたが、すぐに雑談に戻ります。
私の机の周りを二人で探したものの、やはりチョコレートはありません。
「うーん、ないね」
「せっかく作ったのに、残念です」
「そうだ。みんなに聞いてみよう」
森永くんはそう言うと、雑談をしている男子たちの元へと近づいていきました。私もその後に続きます。
「天井(あまい)くん、これくらいの箱見なかった? 赤いラッピングがされてて、ピンクのリボンがかかってるんだけど」
森永くんは天井くんに話しかけました。天井くんは、クラスではいつも輪の中心にいるような男子で、私のような目立たない女子にも優しく接してくれます。
天井くんを含めた男子たちの視線が、一斉にこちらを向きます。
指で箱の大きさを示す森永くんと、その後ろで恥ずかしそうにする私。彼らも状況を察したことでしょう。
「いや、見てないな」
天井くんは律儀に応えてくれます。けれども何だか、いつもより元気がなかったように感じました。
「そっか、ありがとう」
森永くんがお礼を言った後ろで、私もペコリと頭を下げました。
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