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私たちは、もう一度先ほどの空き教室へ戻ってきました。
「誰かが盗っていった可能性もあるのかな」
「そう……ですね」
「もしかして、落とし物として届いてるかも。職員室に行ってみる?」
「もう大丈夫です」
下を向きながら、私は言いました。
「え?」
「チョコのありかがわかりました」
今度はしっかりと、森永くんの目を見て言いました。彼は驚いて言葉も出ないようです。私は畳みかけるように推理を披露し始めました。
「森永くん、さっき天井くんにチョコレートの説明をするとき、『これくらい』って、箱の大きさを指で作ってましたよね」
「うん。でも、それがどうかしたの?」
どうやら、自分のミスに気づいていないようです。
「なぜ、大きさがわかったのですか? 私は大きさまで教えていません」
「そ、それは……ほら、机の中に入れるとしたら、それくらいかなって」
本人も苦しい言い訳だとわかっているのでしょう。台詞の歯切れが悪いです。
「百歩譲って、そうだったとします。では、もう一つ。どうして、箱にかかっているのがピンクのリボンだと知っているのですか?」
「っ……」
「私は、赤いラッピングとしか言ってません。私のチョコレートを盗んだ犯人は、森永くん、あなたです! チョコレートは、バッグの中ですか? それとも、ロッカーの中ですか?」
私は森永くんに指を突き付けて、一気にまくし立てます。単純に、探偵っぽくて格好いいかなと思ってとったポーズでしたが、お行儀も悪いし、恥ずかしさもあったので、私はすぐに手を下ろしました。
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