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「……降参だよ」
森永くんは両手を上げて、困ったように苦笑いをしました。
「なぜ、こんなことを……」
森永くんが、他人のものを盗む人には見えません。まさか、私が他の誰かにチョコをあげると思い込んで嫉妬していた――とか? そうだとしたらむしろ嬉しいのですが……。
しかしここで、予想外の名前が出てきます。
「そもそも、チョコレートは僕が盗んだわけじゃないよ。千夜湖さんがくれたんだ」
「えっ!?」
麗都が?
「うん。如月さんはどうせ渡せないだろうから。食べてあげな。そんな風に言って」
麗都には、私の好きな人が本当にバレていたのですね。なんだか悔しいです。余計なお世話だと言いたいところですが、たしかに渡せなかった可能性も否定できません。今回は感謝するのが正しいのでしょう。私のためを思ってしてくれたのですから。彼女は、私の自慢の幼馴染です。
「そうだったんですか……。それでは、返してください。私のチョコレートを」
もう一度、自分の手から森永くんにチョコレートを渡したいのです。
「うん、ちゃんと返してあげる。でも、如月さんの推理は、もう一つだけ間違ってたよ。あのチョコレートは、今はここにあるんだ」森永くんは自身のお腹に手のひらを当てて言いました。「だから、来月返すね」
た、食べてしまったのですか。私のチョコレートを。最初からそのつもりだったとはいえ、ちゃんと渡してもいないのに……。
それに、来月って……ホワイトデーのことでしょうか!? はわわわわ。そんなこと言われたら、私の頭がホワイトです!!
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